
サクセスストーリーは交渉力から始まる 第十四章
クロージングの威力
どうも、伊東 泰司です。読書の秋、食欲の秋。芸術の秋、そして睡眠の秋?あなたはいかがお過ごしでしょうか?
今回はタイトルにもありますように、クロージングについてわたくし伊東流をご紹介したいと考えていますので、一席お付き合い下さいね・・・。
現在、わたくしは大手企業を中心に教育研修を展開するビジネスに携わっています。メインワークは研修講師です。その中でも、営業スキルアップ研修が圧倒的に多いのですが、その講師を務める研修現場において、受講者の方から一番多い質問は何だと思いますか?じつは、クロージングに関する質問です。
それも決まって「私、クロージングが苦手なんです。是非、クロージングで相手を納得させる決めゼリフを教えて頂けませんか?」です・・・。
あらゆる交渉事においてクロージングは非常に重要なステップです。従いましてわたくしは、このような類の質問には「あなたはクロージングが上手くできないから成約に結びつかないとお考えなのですか?」と必ず質問で返すようにしています。
そうすると、全員の方が「そうです。」と答えてくれます。
さらに、わたくしは続けます。「あなたのクロージングのイメージを教えて頂けますか?」と。すると返ってくる答えは、「商談の最後の締めくくりに、こちらがお客さまの背中を強く押す力や巻き込むトークです。」という類がほとんどです。
あなたはいかがですか・・・?
確かに、一般的なクロージングのイメージかもしれません。また、先輩や上司が教えてくれたクロージングかもしれません。さらに、このような押しの強いクロージングができる営業パーソンがいて、実際に成約に至っているのなら問題ないかもしれません。しかし、多くの営業パーソンは、このようなイメージを持つクロージングが怖くてできず、悩んでいるのが現実です・・・。
それでは、なぜ怖いのか?考えてみましょう。推測できる理由はいろいろあるかもしれませんが、大別すると以下の5つが考えられます・・・。
1) 強く押したり、巻き込もうとすれば、無理に売り込もうと悟られるのが嫌だ。
2) せっかくここまでこぎつけて、決断を促すことでNOと言われたらもったいない。
3) お客さまが納得しているかどうか?わからないのに押せない。
4) お客さまから「買います」という言葉を待っている。
5) 決断を促した時のあの沈黙が耐えられない。
いかがでしょうか?これらの理由を探ると、クロージングが怖いと思わせている要素に2つの誤解を見出すことができます・・・。
ひとつは、クロージングとは商談の最後にするものだと思い込んでいるようです。もうひとつは、クロージングの強さとは『押しの強さ』と捉えている傾向にあるようです。
その結果、この2つの誤解が多くの営業パーソンを未だに苦しめているのです・・・。
さらに、このように苦しんでいる営業パーソンとお客さまとの間には、共通して欠落しているものがあります。それは、相互理解の関係が構築されていないということです。
なぜ、お客さまとの関係に相互理解が構築されないのか?理由は簡単です。それは、このようにクロージングで悩んでいる営業パーソンの商談の進めて方に問題があるからです。一言で言えばしゃべりすぎです。お客さまから話を聞くのはそこそこに、自社や商品の特徴ばかりを一方的にしゃべり続けているケースは珍しくありません・・・。
クロージングでお困りのあなた。今日を境にクロージングとは、つねにお客さまとの確認を怠らないことと認識を改めて下さい。そして、クロージングの強さとは『押しの強さ』ではなく、『決めの細かさ』なのです。つまり、商談の最終段階でここぞとばかりに押しの強いクロージングをかけるのではなく、初回アプローチからお客さまとのやりとり毎に確認し、小さな合意をとっていくことを心掛けて欲しい訳です・・・。
この作業を繰り返していくと、お客さまの考えを細かく確認することになるため、つねにお客さまの状態や方向性を理解しやすくなります。お客さまを理解できるようになると、次に何を提案すべきかの焦点が絞りやすくなるため、その提案はお客さまにとって受け入れやすくなる訳です。逆に、お客さまを理解しないうちの提案など、当然あてずっぽな提案になる訳です。つまり、NOと言われてしまう確率の高い提案になるのです。
営業パーソンは、そのお客さまの納得していない雰囲気を無意識レベルで感じとっているために、やはりクロージングに負担がかかってしまいます・・・。
以下に、決め細やかな確認から小さな合意をとっていくシーンを再現してみます。あなたの営業現場で応用してみることをお薦め致します・・・。
営業:「今日はお時間いただきましてありがとうございます。お電話でお伝えしましたように1時間ほどよろしいでしょうか?」■確認
お客:「ええ、大丈夫ですよ。」■合意
営業:「ありがとうございます。もし仮に、この時間が〜さんにとって価値のある時間になるようでしたら、引き続き次回もお時間をいただき、さらに具体的な情報をご提供させていただきたいので、そのご判断をする時間ということでよろしいでしょうか?」■確認
お客:「まあ、そうですね。そうなればいいですよ。」■合意
営業:「ありがとうございます。後ほど、〜さんのお話をお伺いしたいと考えています。その前に、お話をしていただく価値がある会社・人物であるかご判断していただきたいので、簡単に弊社案内と自己紹介を差し上げてもよろしいでしょうか?」■確認
お客:「はい。じゃあ、お願いします。」■合意
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
営業:「いかでしょうか?今度は〜さんのことをいろいろお伺いしたいのですが、質問させていただいてもよろしいでしょうか?」■確認
お客:「ええ、どんなことでしょうか?」■合意
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
営業:「なるほど。つまり〜さんは、Aについて〜とのお考えということですね。」■確認
お客:「そうなんですよ。結構難しい問題なんですよ。」■合意
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
営業:「なるほど。Bについてはそういうことなんですね。そのBについてなんですが、ひとつ質問させていただいてもよろしいでしょうか?」■確認
お客:「ええ、なんでしょうか?」■合意
営業:「ありがとうございます。Bについて、当社でいいご提案ができると思うのですが、具体的に解決する必要性はいかがでしょうか?」■確認
お客:「ん〜。今はあまり必要ないかもしれませんね。」■残念ながら合意できず
営業:「なるほど。今は必要ないとお考えなのですね。」■確認※ベンチマーク
お客:「ええ。」■すぐの合意で雰囲気を立て直す※ポイント
営業:「よろしければ、なぜ必要ないのか教えていただけますか?参考にさせていただきたいのですが。」■確認
お客:「そうですねぇ。まあ、一番の理由は〜。」■合意
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
営業:「そのCについて、ひとつ教えていただいても大丈夫ですか?」■確認
お客:「どうぞ。」■合意
営業:「以前、同じような事例で大変喜ばれた資料をお作りした経験がございます。一度その資料を〜さん用にお作りいたしましょうか?」■確認
お客:「へえ〜。それ見たいですね。お願いしていいですか。」■合意
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
営業:「ありがとうございます。本日は〜さんのAとBとCについて詳しくお伺いさせていただきましたが、そのうちBについては、現時点での必要性はないということで理解しました。間違いございませんか?」■確認
お客:「そうですね。」■合意
営業:「それでは次回、Cについてお役に立てる資料をお持ちします。今日と同じように来週末のご予定は大丈夫でしょうか?」■確認
お客:「そうですね。土曜日の午後なら大丈夫ですよ。」■合意
営業:「ありがとうございます。最後にひとつお伺いしてもよろしいでしょうか?」■確認
お客:「どうぞ、どうぞ。」■合意
営業:「ありがとうございます。もし仮に、先ほどのAについてメリットのあるご提案をお持ちできるとしましたら、一緒にご覧いただけることは可能でしょうか?」■合意
お客:「ええ、見るぐらいならいいですよ。」■合意
営業:「ありがとうございます。それでは、とりあえず来週の土曜日午後1時にお約束させていただきますね。万が一ご都合が悪くなれば、お手数ですが名刺の番号までお電話いただいてもよろしいでしょうか?お電話がなければ、予定通りにご訪問致しますね。」■確認
お客:「わかりました。念のため私の携帯番号も伝えておきます。」■合意
営業:「ありがとうございます。念のためわたくしも万が一の時に、いただいた番号にご連絡差し上げてもよろしいでしょうか?」■確認
お客:「ええ、そうして下さい。」■合意
営業:「本日はありがとうございました。奥様にもよろしくお伝え下さい。これで失礼しますが、次回もよろしくお願い致します。」■確認
お客:「ありがとうございます。こちらこそお願いします。」■合意
合意の数はいくつになりましたでしょうか?小さな合意であっても、これだけお客さまから合意をいただければ、先述しました5つの恐怖の心配もないのではないでしょうか?そして、営業現場に限らず、あらゆる交渉事において今回お伝えしましたクロージング力は、確実にあなたの交渉力となりますので是非実践して下さいね・・・。
今日からあなたのクロージングを変える。そして、あなたの営業が変わる・・・。
伊東 泰司でした・・・Thanks☆

顧問
ホリプロお笑いタレントを経て、(株)松井物産で約8年間勤務後、ソニー生命に転職。人材採用と教育研修に携わり、2005年から(株)ホロスプランニングに参画、研修事業部の牽引をおこなう。現在、ホロスグループの(株)エルティヴィー顧問。
各企業における社員教育プログラムとしての研修に奔走しています。特に人間性中心心理学、神経言語学におけるコミュニケーションスキル、ネゴシエーターズテクニック(交渉術)などを専門としています。