お金のトラブル

実家の解体費用はいくらかかる?万が一払えない場合の対処法はある?

両親が亡くなって実家を相続したとしても、すでに独立して家を出ている場合は住むことがありません。

いずれ建物が古くなり、解体・売却する必要があります。

その時の解体費用は家の外観や材質、近隣地域との距離などの関係によっては料金が高くなることがあります。

もし解体費用が払えない場合、なにか対策はあるのでしょうか?

あるいは解体せず、空き家のままで残しておくことはできるのでしょうか?

FP監修者
森本 陽子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)・CFP認定者・ 貸金業取扱主任者。自身の経験や知識を活かし、複雑なお金の仕組みや知識をわかりやすく解説しておりツイッターでの有益な呟きにも注目。

解体費用の決まり方

解体費用にかかるお金は住宅の状態などによって千差万別です。

今回は、解体費用が決定される要素について解説します。

  • 構造
  • 立地
  • 地域
  • 付随工事費
  • 解体業者
  • 坪単価
  • 廃材搬出

構造

木造、鉄骨、鉄筋コンクリートなどの材質の違いで費用に差がでます。

木造よりもコンクリートの方が解体に時間と手間がかかり、機材などを搬入・搬出する手間も増えます。

一般的に木造より耐震・耐火性に優れた鉄骨・鉄筋コンクリートは、丈夫にできている分だけ解体費用は高額です。

戸建ての多くは木造ですが、自分の家の構造を事前に調べておきましょう。

また、2階建て、3階建て、平屋などの建物の階数によって解体費用に差が出ます。

なお、勘違いしやすい点ですが、同じ坪数でも平屋よりも2階建てのほうが解体費用が安い傾向があります。

これは「屋根や基礎の解体に費用がかかる」ためです。

30坪の家屋の場合、2階建てなら屋根・基礎は15坪分の大きさであり、平屋なら30坪分です。

「1階建てだから平屋のほうが安い」ということではありません。

立地

隣接している道路の幅や隣家との距離、敷地内のスペースなど解体する家がどんな場所に建っているかによっても費用が変わります。

立地によっては重機が使えないことで手作業になり、道幅次第で交通整理の人員が必要になって人件費が加算されます。

地域

解体する家屋がある地域によって、解体費用は異なります。

東京・神奈川・大阪・名古屋など都市部は相場が高い一方、地方にいくほど相場が安い傾向にあるのが一般的です。

付随工事費

家を解体して更地にする場合、家屋以外の解体・撤去も必要です。

土地を更地にするにはブロック塀やフェンスの撤去、池の埋め戻しなどが必要で、このような家屋以外の部分の作業を「付帯工事」と呼びます。

なお庭先に立派な樹木がある場合でも、植物はほとんどの場合で売ることができません。
よほど手入れされた芸術的な樹木でもない限り、基本的には自費での撤去になります。

解体業者

解体を依頼する業者次第で、同じ内容でもかかる費用はさまざまです。
また、時期によっても解体費用は変わります。

繁忙期は12月と3月といわれているため、その月以外の「閑散期」に申し込むほうが費用を安く抑えられるでしょう。

坪単価

家の解体費用は坪数と構造で計算されることが一般的です。

解体する家が広いと解体作業を行う範囲が広くなるために費用が高くなります。

廃材搬出

家を解体で出たごみの搬出にも費用がかかります。

廃材は品目によって料金が異なり、たとえば木くずはリサイクルが可能であればその分だけ費用が安くなる可能性があります。

費用を安く抑える方法

解体費用は千差万別ですが「狭い道」「広い敷地」などのケースでは高額になりがちです。

できるだけ費用を安く抑えるには、近隣の店舗に相談する以外にもいろいろな対策を考えておく必要があるでしょう。

解体費用を少しでも安くできる方法を解説します。

相見積もりを取る

解体工事を行う前に、複数社から必ず見積もりを取るようにしましょう。
複数の会社に見積もりをすれば、おおよその相場が分かります。

明らかに高い業者はもちろん、他社よりも不自然に安い業者は考えないほうが無難です。

安い業者の見積もりが「一式」ばかりで詳細内容が載っていない場合、あとから追加で請求が行われる可能性もあります。

費用はそこまで安くないとしても、明細をしっかり示してくれる企業の方が明朗会計を期待できます。

家の中の荷物は最小限に

家財などは、解体前に必ず処分しましょう。

家財の処分を解体業者に委託することはできますが、その分だけ費用が高くなります。

自分たちで処分できるものは自分たちで処分し、家屋の解体以外のオプションをなるべく払わないようにすることで費用を安く抑えることが可能です。

最後に処分する廃材の量が増えないように、事前に粗大ごみとして処分しておきましょう。

貴金属・ブランドものなど価値が高いモノが残っていれば、フリマアプリで売ってしまうのも手です。

地域のリサイクルショップよりも高値で売れる可能性が高くなります。
ただし、個別で交渉が発生し、交渉がまとまったあとは発送が必要など、それなりの手間がかかります。

自分の仕事や日常生活、解体作業の打ち合わせに加えての作業になるため、忙しくてうまく交渉が進まないこともあります。

その場合は地域のリサイクルショップで早く売却を終わらせることも考えます。

自治体から補助金が出ることも

自治体次第ではありますが、家の解体に補助金がでることもあります。

自治体によって解体する家に条件があり「空き家であること」「耐震性がないこと」などに限定していることがあります。

全国どこの自治体でも補助を受けられるわけではありませんが、空き家の老朽化問題は深刻になってきていることから補助の仕組みを持つ自治体は増加傾向です。

補助金の内容は常に変更・更新される可能性があるため、最新の情報は自治体に確認して細かな条件を知っておきましょう。

空き家を放置しないことのデメリット

いつか住宅用地の特例が使えなくなる

住宅を所有している場合、土地に対する固定資産税の優遇措置があります。

固定資産税が最大で1/6にまで減額されるほか、固定資産税以外にも「都市計画税」が最大3分の1まで軽減されます。

しかし 2015年に施行された「空き家対策特別措置法」により、放置された危険な空き家と認定されてしまうとこの優遇措置が受けられません。

  • 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • 著しく衛生上有害となる恐れとなる状態
  • 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

    出典:NPO法人空家・空地管理センター|特定空家とは

    優遇措置を受けるには空き家の適切な管理が必要であり、管理には手間も費用も必要です。

    早期に売却することで、管理に余計なお金がかかるリスクを回避できます。

    固定資産税がかかる

    住宅を所有する場合、固定資産税・都市計画税を納付する必要があります。

    住んでいない、遠方で相続した住宅でもその条件は変わりません。
    1月1日の時点で登記簿または固定資産税課税台帳に名前が載っている人に課税されます。

    都市部であればもちろんのこと、地方であっても何十年も払い続けると積もり積もって大きな金額になってしまいます。住宅を持ち続ける限り、納付から逃れることはできません。

    解体することのメリット・デメリット

    メリット

    買い手がつきやすくなる

    更地にすると家に価値がつかないため、土地値での売却になります。

    古家付きの土地は「更地が欲しい」という大多数の買い手には売りにくいため、更地にしてしまうことで買い手がつきやすくなるメリットがあります。

    トラブルに巻き込まれる恐れがなくなる

    解体せずに残しておく場合、地震による倒壊や放火による火事などのトラブルに巻き込まれる可能性は否定できません。
    もしかしたら、空き家によって人にけがをさせてしまうことがあるかもしれません。

    解体してしまえば、このようなトラブルに巻き込まれる心配はありません。

    デメリット

    解体費用を上乗せできるとは限らない

    解体費用に300万円がかかったとして、更地を売却しても300万円を売値にプラスできるわけではありません。

    家に価値がない土地だけの売却額に取り壊し費用を上乗せできたとしても、それはごく一部でしょう。

    丸ごと上乗せして相場と比較して高い土地では、買い手がつかずに意味がありません。

    住宅を取り壊すと固定資産税が上がる

    取り壊しの際に絶対に把握しておきたいことは、固定資産税が大幅に上がるということです。

    住宅が建つ土地「住宅用地の特例」によって固定資産税が1/6になる優遇措置があります。

    この優遇措置が受けられないことで、税金の納税額が一気に跳ね上がります。

    解体して建物がなくなると土地への課税が大幅に増額するため、売却できずに更地の状態でしばらく持っていると負担が大きく増すことになります。

    家の解体費用を払えない場合の対処法

    どうしても家の解体費用を払えない場合は、どうすればいいのでしょうか?

    対策の例として、以下の2つを紹介します。

    • 古家月の土地として売却する
    • 売却後に解体する

    古家付きの土地として売る

    古家付き土地とは、建物が付いている状態で土地として販売することです。

    売主は家を解体して更地にしなくても処分することができ、買主からしても(建物の状態によりますが)すぐに住めるメリットがあります。

    解体費用と比較して値引き額が少ないのであれば、売主にとっては利益になります。

    ただし、古い家つきでは値引き交渉が行われることもあるほか、「更地を欲しい」というニーズには対応できません。

    売却後に解体する

    解体工事は売却が決まったあとに解体する方法もあります。
    販売中は家をそのまま残し、売買契約後に土地を引き渡すまでに解体する方法です。

    売買契約は手付金という形で売買代金の一部が手に入るため、そのお金を使って売却します。

    土地を売却してしまえば固定資産税は必要ありません。維持費の心配からも解放されるでしょう。

    ローンを組んで解体する

    売却を前提とする売却の場合は「空き家ローン」や、目的を問わずに利用できる「フリーローン」が利用可能です。

    金融機関からローンで現金を借入れて一括で支払い、金融機関に分割して支払います。

    融資を受ける相手として、なかでも代表的な金融機関は「銀行」「消費者金融」でしょう。

    銀行のローンは基本的に消費者金融より金利が低いため、消費者金融より返済額を低く抑えることが可能です。

    解体費用のように高額になると返済期間が長期化するため、金利の差によって銀行のほうが返済総額を安く抑えられるのです。

    また消費者金融カードローンは、初回の契約の融資限度額が50万円を下回ることが一般的です。銀行のフリーローンや目的別ローンのほうが大きな金額を借りられる可能性があります。

    以上の理由で、銀行から借りたほうが経済的にも利便性の面でも魅力があります。

    一方、短期間で完済できる場合は一定期間の金利が0円になる「無利息サービス」の存在によって、返済総額を低く抑えることも可能です。

    即日融資が必要な場合は消費者金融を検討しても良いでしょう。

    売却前に知っておきたい注意点

    売却できる状態になっているか

    空き家を売却する場合、「売却して良い状態」かどうかを事前に確認してください。

    例えば相続で得た住宅の場合、所有者の名義変更は済んでいるでしょうか?

    相続登記を行って名義が本人になっていないと売却できません。
    また「共有」の状態の場合、全員の同意がなければ売却できません。

    相続登記は手続きが複雑で時間がかかります。

    数万円程度の料金を払ってでも、司法書士に依頼する方が簡単です。もちろん、手間を惜しまないのであれば自分で行うこともできます。

    契約不適合責任で賠償責任も考えられる

    売主には「契約不適合責任」という、建物が契約内容と合っていない場合に買主に対して責任を負う義務があります。

    空き家の場合に多いのは、契約の時点で買主に知られていなかった雨漏り、白アリなど「瑕疵(かし)」が発見された場合に修理費用が請求されるパターンです。

    まとめ

    今回は、相続した自宅などを解体するための費用を払えない場合の対処法と、「そのまま空き家のままで所有しておけるのか」について解説しました。

    空き家をそのままにしておくと劣化が進み、いつかは「特定空き家」に指定されて固定資産税が更地と同じようにかかります。

    管理費がかかるため、特定空き家になる前に解体して売却するか、古家付き住宅として売却してしまうのが望ましいでしょう。

    もし解体の費用が払えない時は売買契約を締結して得た一時金で売却する方法や、ローンを組んで分割返済する方法を考えていきましょう。

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