住宅ローン

離婚したあとの住宅ローンはどうなる?ケース別の注意ポイントとは

念願のマイホームを建てたとしても、全世帯が順風満帆に生活できるわけではありません。
中には何らかの理由で離婚してしまう人達もいるでしょう。

離婚した場合、残った住宅ローンはどうするのでしょうか?

今回は、離婚時に残された自宅の債務は誰が支払うのか、どのような処理方法があるのか、といった内容を解説していきます。

離婚に動き出してしまいそうな方、まずはご一読ください。

FP監修者
森本 陽子
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)CFP認定者。自身の経験や知識を活かし、複雑なお金の仕組みや知識をわかりやすく解説しておりツイッターでの有益な呟きにも注目。

離婚時に確認すべき事項

すでに住宅ローンを組んでいる夫婦が離婚する場合、以下の内容については忘れずに確認しておきましょう。

いずれも離婚時の話し合いに必要な内容のため、早い段階でチェックしておく必要があります。

  • 名義人
  • 契約内容
  • 残債
  • 価値

名義人を調べる

離婚時には、土地や建物が誰の名義になっているかを調べる必要があります。

不動産にどのような担保(抵当権など)は設定されているかも併せて確認しましょう。

残債の情報もこの時点で確認します。
今後売却する時や家を引き継ぐ際、どちらでも絶対に必要な情報です。飛ばすことなく確認することを忘れないでください。

基本的に住宅ローンを組んだ金融機関に確認を取ればすぐに判明します。

注意点は、住宅ローンの名義人と家の名義人は異なるということです。

それぞれの名義が異なる場合があるため、「調べなくても分かる」と思わずに、念のために金融機関に確認を取りましょう。

契約内容を調べる

契約書を確認し、債務を背負っているのが誰なのかをチェックすることも必要です。

当初の契約とは契約内容が変更になっているパターンも考えられますから、全ての契約書類に目を通しましょう。

契約書類一式は全てひとまとめにしておくと間違いをなくせます。

契約者のパターンとしては、以下の3つが考えられます。

  1. 主債務者:夫 連帯保証人:妻
  2. 夫と妻が2人で連帯債務者
  3. 主債務者:夫 妻は負担をしない

3で妻が負担しないパターンは連帯保証人ではなく、保証協会を利用してカバーしているケースが該当します。

残額も重要

残債がどのくらい残っているのかは非常に重要です。

不動産の価額よりも残債が下回っていて、不動産の売却で利益が出ることがあります(アンダーローン)。

逆に不動産の査定価額よりも残債が上回り、売却しても債務だけが残るパターンもあります(オーバーローン)。

債務が残った場合は、離婚後も住宅ローンの支払いを継続しなければなりません。

ローンの残債については償還予定表や返済予定表で確認できます。

住宅の現在価値を調べる

不動産の価額も調べる必要があります。

不動産業者に査定してもらい、不動産の価額を早めに知っておきましょう。

不動産を売却するべきか住み続けるか、将来的に売却するとしたらいつなのかといったことを判断する材料になります。

家の価値判断にはいくつか方法がありますが、不動産の一括査定サイトの利用が便利です。

物件の築年数や立地などの基本条件をインターネット上のフォーマットに入力すれば、不動産業者が査定金額を提示してくれます。

一度に複数社に依頼できるため、実際に不動産業者を訪れるよりも、はるかに効率が良くなります。

残債と離婚時の財産分与

ローンの残債が残っている場合は、離婚時の財産分与にどのような影響を与えるのでしょうか?

それぞれのパターンに分けて解説します。

住宅ローンは財産分与の必要がない

結論を書いてしまうと、債務は離婚時の財産分与の対象にはなりません。

そのため、仮に残債が1,000万円残っていても元夫・元妻が半分ずつ(500万円ずつ)折半して払う必要はありません。

財産分与の対象には、原則として負債が含まれないためです。

とはいえ、もし債務が残る場合は一般的に夫婦間で負担することになります。プラスを分けてもらえる分、マイナスも双方で負担するのが離婚での清算の基本です。

夫婦共同の負債がある場合、夫婦共同の財産の総額から夫婦共同の負債を差し引き、残額を折半することになります。

返済義務は名義人にある

それでは、離婚後の住宅ローンの返済義務は誰が負うのでしょうか。

返済義務は、住宅の名義人に課されるのではありません。ローンの名義人に対して義務が課せられます。

しかし、住宅ローンの名義人に支払い義務があるといっても、ローンを組む時は連帯保証人が必要になります。

多くの場合は夫が名義人、妻が連帯保証人でしょう。あるいは連帯債務で債務を2人で負担している場合もあります。

その場合は妻側も「私は離婚したから無関係」といって支払いを拒否することはできません。

連帯保証人とは

連帯保証人は単なる慣習ではなく、民法に定められている法的な効力がある制度です。
借主が貸主に対して負う債務に関して連帯で保証します。

ちなみに通常の保証人と連帯保証人は、似ているようで全く異なる制度です。

保証人には債権者が返済を求めてきたときに「借主本人に請求を行うように」と求めることができる催告の抗弁権を有しますが、連帯保証人にこの権利はありません。

また、債務者に資力があるのに支払わない場合、保証人は債権者に対して主債務者の財産に強制執行するように主張することができる「検索の抗弁権」があります。連帯保証人にはこの権利もありません。

さらに、保証人が複数いる場合は頭数で割った金額だけ返済すれば済みますが、連帯保証人はすべての人が全額を返済する義務を負います(返済すべき金額を超えて返済する必要はありません)。

参考:連帯保証人 – 法務省

連帯保証人と連帯債務者の違い

ローンの契約を確認したとき、自分が連帯債務者に指定されていることもあるかもしれません。

例えば、住宅ローン名義人である夫の収入だけでは融資を受けられない時に、妻が連帯債務者になって融資を受けているというケースです。

連帯債務者と連帯保証人の違いは、返済義務の重さが異なるという点です。

連帯保証人はあくまで本来の名義人がローンの返済が不能になった場合に返済義務を負うものですが、連帯債務者は名義人と同じ支払い義務があります。

要は名義人が返済不能になっていないとしても返済義務があるため、金融機関から支払いの通知が届くことになります。

連帯債務を外すのは難しいのが実情です。

自分が連帯債務者になってしまっている場合、弁護士などを通して今後の負担をどうしていくのか名義人である夫と相談する必要があります。

離婚時の検討事項

ローンの種類による判断

オーバーローンの場合

オーバーローンでは自宅を売却しても債務が残るだけです。
夫婦の片方がそのまま住み続けてローンの支払いを続けることになるでしょう。

しかし、誰しもが離婚後に同じ自宅に住み続けられるわけではありません。
その場合は残債をどうするのか検討する必要があります。

アンダーローンの場合

アンダーローンでは売却によって利益が生じるため、売却で得た利益を夫婦で財産分与することになります。

逆に売却をしないほうが考えることが多くなります。

  • 今後の債務をどう負担し合うのか
  • 所有権は誰が持つのか
  • 家に住まない配偶者の財産分与

これらの課題の解決が必要になるでしょう。

家を売却する場合

今の家は売却処分して夫婦がそれぞれ新しい家に住むケースでは、自宅を売却して利益が残る場合はプラスの財産を分与(原則として2分の1)して、売却益から売買手数料を差し引いた残りを分け合えば問題ありません。

一方でオーバーローンになってしまう場合、処分しても残債だけが残ります。
残債の金額が大きくない場合は、支払いを完了してしまえば後腐れがありません。

残債が大きすぎて即時の完済が難しい場合は、自己破産で残債をゼロにすることも検討しなければいけなくなります。

担保権がついている場合は売却に注意

住宅ローンに抵当権などの担保権が付いている場合、債務者は銀行と「抵当権の所有者は所有権を第三者に譲渡する場合は事前に銀行の承諾を得ること」という約束をしている場合があります。

この場合はいくら夫婦で家を売却することに合意していても、銀行の承諾がない限りは銀行との契約違反に該当してしまいます。

担保権がついている場合、約束の有無に関係なく金融機関に確認するのがベターです。

片方が家に住み続ける場合

夫が住宅ローンを支払う

妻が自宅を出ていって夫が住み続ける場合、不動産が夫の名義なら難しいことは考えなくて大丈夫です。そのまま夫が住み続けて債務を負担していけば良いでしょう。

問題になるのは妻が連帯保証人になっている場合です。

夫婦間で「これからは夫が支払う」と決めても金融機関への義務は免除されません。

金融機関と交渉して連帯保証人から外してもらう手続きが必要ですが、外せるかどうかは金融機関次第です。
ただ外すことは難しいでしょう。

代わりの連帯保証人を連れてくるように求められたり、保証協会を利用するなどの手続きが求められたりといったことが考えられます。

妻が住宅ローンを支払う

夫が債務者である場合に妻を債務者に変更することはできるのでしょうか。

もし妻が正社員で働いているなど安定した収入を得られる職業であっても、男性同様の経済力がないと難しいのが現実です。

どうしてもということであれば債務者は夫のままにし、妻が家賃を支払っていく形にはできるでしょう。

ただし、あくまでも契約者は夫のままです。
のちのち妻側の家計が悪化して支払えなくなった場合にトラブルに発展する恐れが残ります。

このあたりを夫婦で話し合っておく必要があるでしょう。

名義を変更する

離婚の際に妻が住宅を取得した場合、本来の名義は夫のままではトラブルのもとです。
解説したように、名義変更に関して金融機関の了承があまり望めません。

離婚の際に「完済後は妻の名義とする」といった内容の書面を取り交わす必要がなるでしょう。

ただし、個人間で約束に留めると将来的にトラブルに発展します。必ず間に弁護士などの専門家を入れて話し合いを進めてください。

住宅ローンの支払いと養育費の関係

子どもを持っている夫婦の場合、養育費は離婚時に必ず議題になるでしょう。自宅の債務が残っている場合、養育費にどのような関係があるのでしょうか?

養育費を請求する側のローンを養育費を払う側が払っている場合

婚姻中に購入した住宅のローンは、本来は離婚に伴う財産分与において清算されているはずです。

そのため、原則としては養育費の算定には影響を与えません。

しかし、離婚に伴う財産分与が終わっていない場合や、妻と子供が住み続ける家の債務を夫が負担するのが前提である場合は養育費の計算に影響が出ます。

養育費の算定時に、債務の支払い額を経費として控除して計算することになるでしょう。計算方法は簡単ではないため、トラブルを回避するためにも弁護士などの専門家に相談して正確に養育費を算出しましょう。

養育費を払う側が自分の住宅ローンを払っている場合

養育費を支払う側が残債を払い続けながらその家に住んでいる場合、ローンの支払いは養育費として考慮されることはありません。

養育費を請求する側の住居費負担が軽減されないためです。

債務金額に関係なく、養育費の金額を決めていくことになります。

ローンを払えない場合は任意売却

離婚と共に家を売却したい場合、ローンの残高が多く残っていたり収入が激減したりといった理由で返済ができないことは十分に考えられます。

預貯金もなく、どうしても完済できない時は任意売却という選択肢があります。

任意売却とは、債務が残っている状態で金融機関との合意を経て家と土地を売却できる方法です。

何らかの事情で残債を返済できなくなった場合や、売却後もローンが残ってしまうことが明らかな場合でも売却することが可能です。

ただし、あくまで金融機関の合意が必要になります。
金融機関の合意が得られない場合は、任意売却を選択することができません。

もし残債の返済ができずに競売になる場合、売却金額は任意売却より少なくなるのが一般的です。

債務者にとっては市場価格に近い価格で売れる任意売却のメリットが大きいため、仮に断られても粘り強い交渉を行う必要があります。

離婚したあとの住宅ローンはどうなる?ケース別の注意ポイントとは まとめ

今回は、離婚の際の住宅ローンの残債をどのように払っていくのか、について解説しました。

原則として住宅ローンの名義人が払っていくことになりますが、連帯保証人や連帯債務などが組まれていると離婚時の手続きが難しくなります。

自分たちだけでは解決できそうもない場合、必ず弁護士などの専門家に依頼して手続きのアドバイスを受けるようにしましょう。

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