資格サイトでよく見かけるファイナンシャルプランナー。
お金に関する資格のようだけど、どんな仕事なのか、就職に有利なのか、副業にできるのか、試験の難易度は…色々分かりにくい面があると思います。
筆者の森本陽子は、4人の子育てをしながら執筆業を中心に活動する現役ファイナンシャルプランナーです。
日本FP協会承認の勉強会グループ(SG)に所属し、多くのFP資格保持者たちと交流してきました。
一見難しそうなファイナンシャルプランナーですが、実は身の回りのお金に関する内容が大半です。
FPとはどんな仕事なのか、資格の活かし方も含めた現役目線での「ファイナンシャルプランナーとは」についてリアルに解説したいと思います。
ファイナンシャルプランナーとは簡単に説明
ファイナンシャルプランナーは、一般的に「お金に関する資格」とざっくり認識されていると思います。さらにわかりやすく解説していきます。
FP=暮らしのお金の専門家
ファイナンシャルプランナーとは、個人のライフプランに対して、お金の面でアドバイスや提案をしながら一緒に考え、サポートする専門家です。
家計を健全に立て直すアシストも行います。言わば「暮らしのお金の専門家」です。
誰でも「こんなマイホームがほしい」「老後は旅行にたくさん行きたい」など将来の夢やライフプランがありますよね。
ライフプランを実現するためにはある程度のお金を計画して準備する必要がありますが、素人にはちょっと難しい部分です。
そこで専門家として具体的にアドバイスをするのがファイナンシャルプランナーの仕事です。
FPの専門範囲
ファイナンシャルプランナーは顧客の様々な希望に対応するため、家計のすべてを幅広く勉強します。
実際の資格試験では個々の種類によって内容が異なりますが、基本的には以下の6科目がFPの専門範囲になります。
科目 | 内容 |
---|---|
1.ライフプランニングと資金計画 | 公的年金・社会保険など |
2.リスク管理 | 生命保険・損害保険など |
3.金融資産運用 | 金融商品の仕組みなど |
4.タックスプランニング | 税制など |
5.不動産 | 賃貸・有効活用など |
6.相続・事業承継 | 相続・贈与など |
ファイナンシャルプランナー資格の活かし方5パターン
実際にファイナンシャルプランナーと呼ばれる人たちは、家計の相談業務だけでなく多様な形で資格を活かしています。
主なFP資格の活かし方5パターンを紹介します。
①【独立系FP】FPとして独立開業
ファイナンシャルプランナーとして独立開業し、家計のアドバイザーやコンサルとして活躍する方法です。
独立系FPと呼ばれます。しかし相談料やコンサル料をもらうだけのビジネスでは、食べていくのが難しいのが現実です。
独立開業するならばファイナンシャルプランナーを名乗りながら不動産、保険、金融商品などを取扱う方が一般的で安定しやすいでしょう。
レアですが商品を販売しない独立系ファイナンシャルプランナーとして成功している人もいます。
相談料のほかにセミナーや本の出版、執筆、広告料、メディアの出演など様々なキャッシュポイントを得ているケースが多いようです。
②【企業内FP】会社員として活躍
FP資格を取る人たちの中で最も多いのが、会社員として保険や金融商品などを販売しながらFP関連業務に関わっているケースです。企業内FPと呼ばれます。
不動産、保険、金融業など何かしら顧客の資産に関わる商品やサービスを販売する会社の社員たちは、業務上FPの資格を取得しています。
この場合は企業内FPとして、自社で取り扱う商品を提案します。自己研鑽のためや顧客から信頼性を得るためにも資格は有効です。
実務経験の年数を満たしている場合はFP3級が免除になるため、2級から受験する人が多いです。会社から資格取得を奨励されていたり資格手当が出ることもあります。
業界に就職したい場合はあらかじめFP技能士2級まで資格取得しておくと有利に働くかもしれません。
③士業のためのダブルライセンス
税理士や社会保険労務士などの士業の人たちがダブルライセンス、トリプルライセンスの選択肢としてファイナンシャルプランナーの資格を取得しているケースも多いです。
士業の人たちにとってファイナンシャルプランナーは顧客を獲得するためのひとつの差別化になるからです。
士業に比べたらFPは比較的取りやすい資格であるため、最難関であるCFPや1級FP技能士まで取得する人が多いようです。
④副業
ブロガー、セミナー講師、動画配信、ライターなどで、本業を持ちながら副業収入を得る方法もあります。
副業とは言え「小さな独立系FP」として位置づけられますから、商品を販売しない稼ぎ方は不安定で相当な努力が必要です。
ただし、うまくいけば、資格を活かしながら本業のほかに大きな収入源になります。
⑤自分の家計管理
資格が活かせるのは必ずしも仕事のシーンばかりではありません。FPとして自分の資産や家計を自分で管理・プランニングできる能力も一生の武器になります。
また投資でどんな金融商品を買えばいいのか判断がしやすくなり、自分の資産を増やすことができるかもしれません。
趣味と実益を兼ねて、自分や家族のためだけにFP資格を取得する人もいます。
実際に出会ったFPの稼ぎ方3選
私がこれまで実際に出会った「ファイナンシャルプランナー」として活動する人たちの働き方、稼ぎ方の具体例を3つ紹介したいと思います。
①お金の情報ブロガー
FP協会会員向けのセミナーで、ブロガーとして活躍されている方がいました。自身の経験を元に、ターゲットを絞りながらお金の情報をブログで発信し続けること数年。
当時は会社員だったそうですが退職し、ファイナンシャルプランナーとして独立されました。自分のブログと他社に記事を寄稿して収入を得ているそうです。
②特化型FP
「子どもへのお金の教育」に特化して活動しているママさんFPにお会いしました。個別の相談ではなく、セミナー中心にお仕事をしているようでした。
自分の強みを活かし個性あるファイナンシャルプランナーになることで仕事を増やしたようです。
他にも「終活」に特化してセミナーをされているFPの方と交流したことがあります。試行錯誤の上、特化して活動したら評価されるようになったとお話していたことが印象的です。
③資格学校の講師
講師として資格の学校でFP講座を教えている方に出会いました。講師なのでFPとしての知識はもちろんですが、それよりも「どうしたら生徒に伝わるのか」と試行錯誤されておられました。
大勢を前に資格の勉強を分かりやすく教える仕事は、普通のFPとはまた違った世界です。同じファイナンシャルプランナーと言えど、求められる能力はこんなに多様なのかと驚いた次第です。
ファイナンシャルプランナー資格試験の種類と難易度
ファイナンシャルプランナーの資格にはいくつか種類がありますが、主要な種類と難易度をそれぞれ解説します。
FPの資格試験を実施しているのは2団体。
日本FP協会と、きんざい(一般社団法人金融財政事情研究会。以下「きんざい」と言います)がそれぞれで実施しています。
3級FP技能士
日本FP協会ときんざいが実施する国家資格。
FPとして最初の一歩の資格になります。
実務経験がなくても受験できます。難易度は比較的低く、簿記3級と同じ程度のレベルと言えるでしょう。約1ヶ月、地道に勉強すれば独学でも十分合格できます。
就職に有利かどうかは微妙なところです。もちろん何の資格もない人よりは有利ですが、業界の人にとって3級は「素人でも普通に取れる資格」の位置づけにあると思います。
2級FP技能士
日本FP協会ときんざいが実施する国家資格。
3級に比べて難易度がずっと高くなります。簿記2級程度の難易度と言われますが、実務経験があれば難易度は低く感じられるかもしれません。実務の知識で3割ほど頭に入っているはずなので、独学で十分合格できます。
業界人にとっては「簡単ではないが取れて当たり前」なレベル感でしょう。
独立開業する場合は最低でも持ってないと厳しいです。
3級から受験している実務経験なしの人にとっては、独学が厳しくなる分かれ目かもしれません。
1級FP技能士
日本FP協会ときんざいが実施する国家資格。
とても難易度が高く、最低でも半年はしっかり勉強する必要があります。税理士などに比べたら難易度は低いですが、勉強内容は複雑難解です。業界で働いている人でさえ合格が難しい試験ですが、独学で合格する人もたくさんいます。
2級と違い、取得していると一目置かれる可能性が高いです。
独立開業や士業のダブルライセンスとするなら1級取得が理想です。
AFP
日本FP協会が実施する民間資格。2年ごとの資格更新に所定の継続教育が義務付けられています。実務経験なしでも取得可能です。
難易度は2級FP技能士と同じレベルと言われていますが、すでに2級合格済であれば受講して提案書を提出するだけなので、比較的取りやすい資格です。
合格後は日本FP協会の会員費と資格更新のための維持費がかかります。お金はかかりますが、合格したら終わりのFP技能士試験に比べ、継続的な能力維持の印象を与えることができます。
ただ、一般的な知名度としてはまだまだ高くない状況です。
CFP
日本FP協会が実施する民間資格。AFP資格と同様に2年ごとの資格更新に所定の継続教育が義務付けられています。
難易度は1級FP技能士と同レベルとされていますが、CFPは科目ごとに受験できるため1級よりも比較的受かりやすいかもしれません。CFPに合格すると1級の学科試験が免除になるため、あえてCFPを経由するルートで1級を取得する人もいます。
AFPと同様に日本FP協会の会員費と資格更新のための維持費がかかります。
お金はかかりますが、合格したら終わりのFP技能士試験に比べ、継続的な能力維持の印象を与えることができます。
ただ、一般的な知名度としてはまだまだ高くない状況です。
まとめ
ファイナンシャルプランナーとは「暮らしのお金の専門家」として個人のライフプランに対して、資産運用などお金の面でアドバイスや提案をしながら一緒に考え、サポートする専門家のことです。
幅広い知識が必要ですが、その働き方は多様で、プライベートでも役立つ資格です。資格の活かし方は、必ずしもお金のアドバイザーだけではありません。自分に合った働き方を自分で発掘できる資格です。
少しでも資格に興味がある人は、ファイナンシャルプランナーって自分に向いているかな?と考えるよりもとりあえず資格を取って、それから働き方を考えてもいいかもしれないですね。