大学卒業後の就職や転職、新婚、出産など、人生には何度か住処を移すタイミングがあります。
そんな時にネックになるのが「引越し費用」です。引越し先の間取りや時期にもよりますが、数十万円単位の費用が発生することもあるでしょう。
それでも、事情がある以上は引っ越しをするしかありません。そんな時、どのような対策を打つことができるのでしょうか?
今回は引っ越しの初期費用が払えない場合の対策を解説します。

引越しにはこれだけのお金がかかる!
引っ越しの際は引越し業者に支払うお金ばかりを心配してしまいがちですが、ほかにも必要なお金はたくさんあります。
一例として、物件を借りるときの必要になる項目と費用相場を紹介します。
項目 | 相場 |
---|---|
敷金 | 家賃1ヶ月分 |
礼金 | 家賃1ヶ月分 |
前家賃 | 家賃1ヶ月分 |
仲介手数料 | 家賃1ヶ月分+消費税 |
鍵交換費用 | 15,000円~25,000円 |
火災保険費用 | 15,000円~25,000円 |
保証会社利用料 | 家賃の50~100%前後 |
引っ越し業者への支払い | 3.5万円~15万円
(間取り・時期によって異なる) |
家具・家電の購入費用 | 5万円以上 |
これらの初期費用が払えない場合は引っ越せるのでしょうか?
答えはNOです。あくまで「初期費用」ですから、引越し前の契約時に支払う必要があります。分割払いなどの一部例外を除いて、原則として後払いには対応していません。
引っ越しの初期費用が払えない場合の対策
クレジットカードで分割払いにする
不動産業者の対応にもよりますが、物件を借りる時の初期費用を分割払いにすることも可能です。
クレジットカードによって分割できる回数に差があるため、自分のカードが何回払いに対応しているのかを確かめたうえで相談しましょう。
一括では初期費用が払えない人でも、分割なら何とか払えるはずです。
注意点としては、「現金での分割払いは不可」であることです。
大家さん次第ではできることもありますが、可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。
現金では一括払いのみと覚えておいたほうが賢明です。
また、分割回数を多くすると返済期間が長くなるのも注意する必要があります。
利息がかさんで返済総額が大きくなり、さらに完済が遠のく可能性があります。
家族・友人から借りる
クレジットカードを持っていない人や、どうしても分割での支払いに抵抗がある人は家族・友人から個人的に借金して支払うという手段もあります。
ただし、その後の返済遅れには要注意です。
友人や家族は少しの遅れであれば笑って許してもらえるでしょう。
しかし、あまりに返済が遅れた場合は家族の絆や友情にヒビが入ることもあります。
「金の切れ目が縁の切れ目」ともいいます。
金融機関からの借金と同様、約束の日付には絶対に返済することを忘れないでください。
引っ越しまで時間がある場合は、臨時のアルバイトで稼ぐことも検討しましょう。
自治体独自の助成金を利用する
引っ越しに対して助成金が支給される地方自治体も存在します。
多くは子育て世代や新婚世帯の補助を目的としているため、条件に合致すれば大幅に支出を抑えることが可能です。
ただし、助成金は募集人数や期間が限定されています。引越したあと、永久にもらえるわけではありません。
助成金の例
静岡市では、新婚世帯を対象とした「結婚新生活スマイル補助金」という補助金を交付しています。
条件として以下の7つ全てを満たすこともできます。
(1)令和2年4月1日~令和3年3月31日の間に婚姻届を提出し、受理された夫婦
(2)婚姻日において、夫婦がともに34歳以下
(3)令和元年分夫婦の所得を合算した金額が340万円未満
※令和元年中に奨学金の返済を行っている場合は、令和元年分の返済額を控除します。
例)350万円(令和元年夫婦所得)-15万円(令和元年奨学金返済額)=335万円(=補助金の対象)
※結婚を機に離職し申請時に無職の方は、離職票又は雇用保険受給資格者証の写しをご提出いただくことで、その方の令和元年分の所得を0円とみなして計算することができます。(4)申請時において、静岡市内で同居している。
(5)補助金の交付を受けた日から1年以上、申請に係る住宅に定住する意思がある
(6)過去に夫婦の一方又は双方が本補助金の交付を受けていない
(7)市町村民税の滞納がない
引用元:静岡市|結婚新生活スマイル補助金
住宅購入であれば「住宅購入費」「住宅工事費」、住宅賃借の場合は「同居を始めた月とその翌月分の家賃・共益費」「敷金」「礼金」「仲介手数料」が補助されます。
茨城県の境町でも同じように「民間賃貸住宅家賃補助金」があります。
- 申請時に夫婦ともに対象住宅に住民登録があること
- 申請時に夫婦ともに40歳未満であること
- 世帯の年間所得の合計が510万円以下であること
- 家賃が5万円以上であること
- 家賃及び町税を滞納していないこと
- 他の公的制度(生活保護等)により家賃補助を受けていないこと
引用元:境町|民間賃貸住宅家賃補助金
月額15,000円が、申請した月の翌月から最大で24ヶ月間支給されます。
そのほか、東京都の以下の地域で引越しの補助金が支給される場合があります。
- 江戸川区
- 北区
- 渋谷区
- 江東区
- 文京区
- 新宿区
- 墨田区
それぞれの補助金は各自治体のホームページで詳しく紹介しています。
ただし、助成金を受け取るには厳しい条件があり、必ずしも受け取れるとは限りません。
引越し先の自治体で補助金がない場合は、そもそも利用することができません。
カードローンで現金を借りる
クレジットカードを持っていない場合は申し込みから始める必要があり、即日で受け取ることはできません。
その場合、カードローンが選択肢として有力です。
カードローンは、文字通り「ローンカード」を使ってATM等からお金を引き出して使えるローンです。
最大の特徴として、利用限度額が設定されていることが挙げられます。利用限度額に達するまでは、返済途中であっても追加で借り入れることが可能です。
銀行系カードローン
ひとくちにカードローンといっても、銀行のカードローン・消費者金融系のカードローンに分かれています。
銀行のカードローンは消費者金融系カードローンよりも金利が低いのが特徴です。
消費者金融が年3.0~18.0%に対し銀行は2.0~15.0%程度で借り入れることができます。
多くの銀行が取り扱っていることでサービスも千差万別で、選択肢が多いこともメリットです。
銀行が扱っているという「安心感」を重視する方もいます。
ただし銀行は即日融資に対応していません。
2018年1月より銀行はローンの申し込みを受けた際に、警察庁のデータベースにアクセスすることが義務化されています。
反社会的勢力の人間かをチェックする必要があり、この作業に1日以上の時間がかかります。そのため、即日融資ができないのです。
消費者金融系カードローン
即日で融資を受けるなら、消費者金融が有利です。
審査は最短30分で、申し込みから契約まで1時間で完了することもあります。
また、消費者金融独自の無利息サービスを利用できます。
初回の利用に限り、一定の期間は利息がかかりません。完済すれば何度借り入れても無利息です。
引越しローンを利用する
引っ越しで使えるローンはカードローンやフリーローン以外にも、引越しにだけ使える「引越しローン」があります。
目的が限定されている分、金利はフリーローン・カードローンより低いのが特徴です。
例えば中京銀行の「引越しローン」では変動金利を採用しており、審査によって「年4.2~5.2%」「年6.2~=7.2%」「年8.2~9.2%」のいずれかに設定されます。
初期費用を抑える方法を考えることも重要
引っ越し費用が全く用意できない場合の対策も大切ですが、そもそもの引っ越し費用を安く抑える努力も必要です。
ここでは、少しでも初期費用を抑えるための対策を解説します。
一括査定サイトを利用する
引っ越し費用は業者ごとに千差万別であり、まずは業者ごとに提示される料金を把握することが大切になります。
しかし、1社ずつ見積もりを依頼するのは面倒です。そこで一括査定サイトを利用しましょう。
条件を入力することで、複数社の見積もりが瞬時に提示されます。手間をかけずに相見積もりが可能です。
複数の会社の提示金額が同じであり、値引きの交渉にも利用できます。
荷造り・荷解きを自分で行う
どの引っ越し業者でも格安のプランとして「荷造り・荷解きを利用者側で行うプラン」があります。
利用できれば通常よりも引っ越し費用の節約が可能です。
ほかの項目でも共通ですが、自分たちでやれることはできるだけ自分たちでやることで、費用を抑えられます。
引っ越し単身パックを利用する
一人暮らしの引っ越しで、「引越し単身パック」の利用する方法もあります。通常のプランよりも引っ越し費用を抑えることが可能です。
また、「フリー便」という名称で引越す日にちだけ決めるだけのプランもあります。作業の開始時間を引越し業者に任せることで、通常よりも数千円程度は安くなります。
物件の家賃を見直す
手っ取り早いのは、家賃が安い物件に切り替えることです。
敷金・礼金・保証料・家賃の1ヶ月分や家賃の〇%といったように家賃が計算のもとになっているため、家賃を抑えることで毎月の費用のほか、初期費用も大幅に減らすこともできます。
敷金・礼金ゼロの物件を選ぶ
最近では敷金・礼金がゼロの物件が登場しています。こちらを選ぶことで初期費用を大きく抑えることが可能です。
ただし、メリットばかりではありません。
敷金は賃貸を出るときの原状回復費用に使われます。
敷金を払っておけば原状回復費用のその分は安くなりますが、敷金を預けていない場合は全額を負担することになります。
一方の礼金はマンションのオーナーへの謝礼であり、オーナーさえOKしてくれれば安いに越したことはありません。
値引き交渉をしてみる
実は、賃貸物件を検討する段階で値引き交渉も可能です。
不動産仲介業者を通じてオーナーに値引き交渉を持ち掛けることで、交渉次第では家賃を下げたり、礼金を下げたりしてくれる可能性もあります。
ただし、あくまでも最初から提示される金額で借りるのがマナーです。
強引な値引き交渉はせず、あくまでオーナー側の好意があればありがたく受け取る姿勢を忘れないようにしましょう。
引っ越し会社を利用しない
引っ越し費用は物件の間取りのほか、荷物の量や繁忙期か否かによって変わります。
単身でも3~5万円、ファミリー世帯では7~10万円が最低でも必要です。
この費用は、引越し費用を利用しなければ払う必要はありません。
友人・家族に手伝ってもらって以下のような作業を自分で行えば、引越し会社を使うより格安で引越せます。
- 段ボールを郵送する
- 自分の車で運ぶ
大型の家具がないのであれば、荷物を詰めた段ボールを郵送することで安く引越しが可能です。
事前に荷物の量を配達業者に伝えておくとスムーズに手続きできます。
積載量が大きいクルマ(ミニバンなど)を所有しているのであれば、自分で運ぶのも良いでしょう。
レンタカーでトラックを借りることも可能です。
ただし、積載量の限度を超えると「過積載」となるほか、荷物によって後ろが見にくくなることによる事故に注意しましょう。
タンスなど大型の家具は自分たちだけでの運搬は難しいですから、その時は引っ越し業者を頼りましょう。
閑散期に引越しをする
引っ越し業者の値段設定は、閑散期と繁忙期で2倍くらい違うことがあります。閑散期で引っ越し業者が暇な状況であれば、さらに値引き交渉に応じてくれることもあるようです。
可能であれば3~4月の繁忙期を外して引っ越しを行いましょう。
家電購入費を抑える
学生が就職を期に実家から賃貸に住むケースでは、入居してから揃えるものが多くなります。
特に洗濯機やエアコン、冷蔵庫などの大型家電を揃えようとすると数十万円のお金がかかることも珍しくありません。
そこで、最初から家具家電がセットされた部屋をチョイスすることも選択肢に入れておきましょう。
自分の理想の家電を揃えることはできなくなりますが、引越しの初期費用を大きく節約できます。
引っ越しの初期費用が払えない!現金を用意する方法と初期費用の抑え方 まとめ
引っ越しは時期によっては大きな費用が発生するため、費用を捻出できずに引っ越しができない事態に陥ることも考えられます。
そうならないように、利用できる法的な制度は何でも利用するべきです。引っ越し先の自治体次第ですが、公的な補助金を利用することも可能です。
それでも賄えない場合は「部屋のグレードを下げる」「カードローン等を利用する」といった方法を使って、どうにかお金を払える状況に変えていきましょう。