職業訓練受講給付金は簡単にいってしまうと「規定の条件を満たす方が職業訓練を受けて毎月10万円もらえる」制度です。
正確には、公的な職業訓練をハローワークの支援指示で受講している期間に給付を受ける求職者支援制度となります。
これから自分が就きたい仕事について学びながらお金をもらえる、というのはとても魅力的な制度ですが、誰にでも支給されるわけではありません。
この記事では、職業訓練受講給付金制度の詳細、具体的にどんな方が対象となるのか、さらに支給を受けるにあたっての注意点を詳細に解説していきます。
転職を考えている方、ブランクの後に復帰する方、資格や技術取得をしたい方にとって、これからのキャリアプランを立てる上で一助となるはずです。
職業訓練受講給付金制度の詳細
まず、職業訓練受講給付金をどんな方がもらえるのか、もらうための要件を確かめておきましょう。
どんな人が職業訓練受講給付金をもらえる?
職業訓練受講給付金を支給される対象者は、「特定求職者」と呼ばれます。
特定求職者となるには、
- ハローワークに求職の申込みをしていること
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
- 労働の意志と能力があること
- 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
以上のすべての要件を満たしておかないといけません。
職業訓練受講給付金支給の要件
- 本人収入が月8万円以下(給与・年金・仕送り・養育費などの計)
- 世帯収入が月25万円以下
- 世帯全体の金融資産(現金・預金・株・投資信託など)が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- すべての訓練実施日に出席している(やむを得ない理由がある場合でも、支給単位期間ごとに8割以上の出席率が必要)
- 世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
受給は失業保険をもらっている間に就職できなかった人や、就職先が見つからず卒業した、自営業を廃業した方なども対象です。ただしアルバイト中の方は、週20時間以上働いていたら受給できません。
職業訓練の種類は?どんなことを学べる?
実は「職業訓練」と呼ばれる制度は大きく二つに分かれています。その2つとは
- 公共職業訓練(国や各都道府県が行っている職業訓練校または民間が行っている職業訓練校)
- 求職者支援訓練(民間が行っている職業訓練校)
です。
公共職業訓練とは?
公共職業訓練は、失業保険を受け取れる方やすでに受け取っている方が対象です。公共職業訓練は、国や各都道府県が行っている職業訓練校や民間が行っている職業訓練校で行われています。
求職者支援訓練とは?
失業保険を受け取れない方や、受けていない方が対象となる民間が行う職業訓練です。民間は、大学や専門学校、NPO法人、一般企業等となっています。
職業訓練受講給付金を受け取るのは、この求職者支援訓練を受ける方というわけですね。
具体的な求職者支援のコースの種類は?
全国で様々な職業訓練が行われているのですが、問題は自分が希望するコースや内容が、受けられる(受けたい)場所や期間で実施されているわけではない点でしょう。
開講の頻度が高いものもあれば、年に1度しかチャンスがないコースもあるのです。
「どんなコースがあるの?」と気になったら、「ハローワークの職業訓練検索」で検索してみることをおすすめします。
「求職者支援訓練」に絞り込んで、地域、分野、募集期間などで検索できるので、自分が希望するコースがあるかをすぐに確かめられるでしょう。
コースの種類は多岐にわたる
職業訓練受講給付金を受け取れる職業訓練コースの種類は多岐に渡ります。
パソコン、CADオペレーター、WEBクリエーター・デザイナー、といった内容から、簿記・経理・会計といった分野、さらに医療事務、介護、保育士・保育士補助などの分野、アロマ・エステ、ネイリスト・ネイルサロンなどのコースが実施されていることもあります。
職業訓練の種類はとにかく多いので、検索はもちろん直接ハローワークに行って相談してみてもよいでしょう。
給付金目当てでの受講は絶対に避けよう
職業訓練さえ受ければ給付金がもらえる!と、給付金ありきで考えるとちょっと大変なことになりそうです。
職業訓練の受講にあたっては、最終的に受講した内容の職業に就くということが大前提となり、ハローワークとしては求職者の早期就労が給付金の最大の目的です。そのため職業訓練は通常よりもハイペースで授業が進み、仕事に就けるというレベルまで短期間で習得することになります。
中途半端な気持ちや、ましてや給付金狙いで受講してしまうと授業についていけなくなり、最終的には詰め込まれたスケジュールで遅刻・欠席が増え、途中から給付金を受け取れなくなる、というケースもあります。
絶対にその職業に就くという根気とやる気が必要ですので、安易に受講するのはおすすめできません。
そもそも人気の科目は定員オーバーなこともありますし、入校の際に面接や筆記試験が必要な場合があり、そこで落ちてしまうこともあります。その辺りも含め受講する際はよく考え、ハローワークでじっくり相談しながら慎重に決めましょう。
職業訓練受講給付金手続きの流れ
- ハローワークで求職申込、求職者支援制度の説明を受ける。
- 職業相談を受けつつ訓練コースを選び、受講申込書などの必要書類を受け取る。
- ハローワークの窓口で受講申し込みの手続きを行う。同時に給付金の事前審査を申請。その後ハローワークで受付印を押印した受講申込書を訓練実施期間に提出。
- 訓練実施期間による選考(面接・筆記等)を受ける。
- 訓練実施期間から合格通知が届いたら、試験開始日前日までにハローワークへ。
- ハローワークが「就職支援計画」を作成し、それに基づき支援指示を受ける。
- 訓練受講中~訓練修了後3カ月間は、原則として月に1回、ハローワークが指定する日(指定来所日)に来所し、定期的な職業相談を受ける。給付金の支給申請もこの日に行います。
ハローワークが初めての方は、いきなり給付金の申し込みというわけにはいきません。まず、登録して求職活動しているということが大前提になります。窓口で相談しましょう。
給付金の支給申請は毎月行いますが、その都度ハローワークによる審査があります。求職活動をしていなかったり訓練を休んだりしてしまうと、給付の打ち切りや訓練の強制退所をさせられることがあります。
最初から最後までハローワークで指導されたことをきちんと守る必要がありますので、決定したら気を引き締めて求職活動を続け、休まず職業訓練を受けましょう。
実際に給付金を受け取れるのはいつ?
給付金の支給申請をして、実際に給付金が自分の銀行口座に振り込まれるのは、申請手続きから数日から10日程度といわれています。
申請すればすぐに入金されるわけではなく、ハローワークによる給付金の支給決定などのステップを挟んで、振込が実施されます。
つまり、訓練開始後初めて給付金を受け取るまでには1ヶ月プラス1週間~2週間ほどみておく必要があるでしょう。
これから訓練をスタートするなら、支給が生活費の重要なポイントを占めることも多いでしょうから、おおよその入金の目安がわかると安心ですね。
職業訓練受講給付金の事前審査に必要な書類
支給を受けるにあっての事前審査で、提出する書類にはどのようなものがあるのでしょうか。
番号確認書類(原本) | マイナンバーカード、通知カード、マイナンバーの記載のある住民票(住民票記載事項証明書)のうち一点 |
---|---|
身元(実在)確認証明書 | マイナンバーカード、運転免許証等のうち一点 |
ハローワークから交付された各種様式 | 受講申込書、受講申込・事前審査書(安定所提出用)、職業訓練受講給付要件申込書、職業訓練受講給付金通所届 |
所定の添付書類 | ・直近3カ月以内に交付された住民票謄本の写しまたは住民票記載事項証明書 ・事前審査申請日の前日に得た申請者本人およびすべての同居配偶者の収入を証明する書類 ・給付金の振込先となる通帳 ・その他、ハローワークが必要とする書類 |
支給申請に必要な書類
職業訓練受講給付金は、事前審査時の提出書類以外に支給申請時にも書類提出が必要です。
- 職業訓練受講給付金支給申請書(訓練実施機関による受講証明を受けたもの)
- 就職支援計画書
- 給付金支給状況(支給記録)(あらかじめ交付を受けていない場合は不要)
- やむを得ない理由で訓練を欠席した場合は、その理由を証明する書類
- 寄宿手当の支給を希望する方は、寄宿を開始したことまたは終了したことを証明する書類
職業訓練を欠席すれば給付金はもらえない
職業訓練受講給付金を受け取るためには、すべての訓練に参加する必要があります。
一度だけであっても授業に参加しなければ、給付金は受け取れません。
例外となる「やむを得ない理由での欠席」にはどのようなものがあるのでしょうか。
やむを得ないと認められている欠席理由には、
- 本人の病気やケガ(処方箋や医療機関の証明書、領収書が必要)
- 天災等
- 暴風雨雪、列車遅延、交通事故など
- 就職のための面接
- 本人や親族の婚姻・親族の葬式
親族は、6親等以内の血族、配偶者、3親等内の姻族のことをいいます。
欠席しないように受講期間中は努めるべきですが、万が一欠席する場合には証明書類が必要な時には準備しましょう。
職業訓練受講給付金の審査
職業訓練受講給付金の審査は厳しいと一般的にいわれています。審査項目の多さや毎月確認されることが厳しさの一因となっています。
職業訓練受講給付金の審査が厳しい理由
職業訓練受講給付金の事前審査は、7つの項目があります。項目が多いと詳細まで審査されるわけですから、「厳しい」「なかなか通らない」といわれる理由となっているでしょう。
本人収入、世帯収入、土地や建物の所有など審査項目が多岐にわたっているため、誰でも簡単に通るわけではありません。
また、ハローワークの窓口で毎月審査内容に相違がないか、変化が起こっていないかを確認する点も審査の厳しさを感じますね。
審査のハードルは高いと感じますが、職業訓練受講給付金を受給できれば、生活面での安心感が高まるはずです。要件を確認の上申し込みをしましょう。
金融資産審査は行われる?
金融資産とは、貯金だけでなく株式、生命保険、投資信託、債券なども含みます。職業訓練受講給付金の事前審査の項目には金融審査も含まれています。
受給資格の要件を満たすためには、金融資産は300万円以下でないといけません。受給を申し込む前に対象となる資産を合計して必ず確かめておきましょう。
職業訓練受講給付金にまつわるQ&A
Q.確定申告は必要?
A.職業訓練受講給付金は非課税です。したがって確定申告の必要はありません。別件で確定申告をする場合も、収入に計上する必要はありません。
Q.世帯収入でボーナスのあった月はどうなる?
A.給付金受給の条件の一つに、世帯収入が月25万円以下であること、というものがあります。
ボーナス月に月給と合わせて25万円を超えてしまう場合、その月の給付金は受け取れません。毎月ごとの収入で、その月の受給判断がされます。
Q.アルバイトしながら給付金はもらえる?
アルバイトをしながら給付金をもらって職業訓練を受けることは可能です。
ただし、限度があります。
- 週所定労働時間が20時間未満である
- 月収8万円以下である
これらが条件になります。
週所定労働時間が20時間未満ということは、週4日働いた場合、1日の労働時間は4〜5時間までとなります。ただ、実際は職業訓練での課題なども多く忙しいため、現実的にアルバイトにこれ以上の時間を割くのは困難でしょう。
また、「月収8万円以下」の月収には年金・仕送り・養育費など他の収入も含んだ金額です。
月に一度のハローワーク指定来所日に審査がありますので、給与明細等の証明書類を持参して、条件に合っていることを証明しましょう。
Q.職業訓練受講給付金のデメリットは?
A.給付金を受け取れることは間違いなくメリットですが、デメリットも気になりますね。
実際に職業訓練を受けた方の感想も含めて見てみると、
- 受給の手続きや期間中の審査が大変手間がかかる
- 職業訓練=実務経験とはならず、就職での利点とならないこともある
- 訓練を受けてから仕事に就いたら向いていなかった、思っていたものと違った場合に大きな時間のロスとなる
以上が主なデメリットとしてあげられます。
職業訓練が、自分が就きたい仕事への近道となる前提があり、書類や手続きの手間も加味して受給する価値がある場合だけメリットになるといえるでしょう。
Q.職業訓練受講給付金は失業保険と同時にもらえる?
A.失業保険と職業訓練受講給付金は同時に受け取れません。
失業保険が優先になるため、失業保険を受給する方は終了後でないと、職業訓練受講給付金の対象とならないのでご注意ください。