生活保護

生活保護における7つのデメリットと受給者の義務を解説

 

「ケガや病気で働けない・・・」

このような事情がある場合、セーフティネットとして用意されているのが「生活保護」です。

しかし、ただお金がもらえるだけではありません。
受給者には守るべき義務が発生するため、人によってはデメリットに感じることがあるかもしれません。

今回は、生活保護のデメリットを中心に解説していきます。

監修者
田中 與志彦
元自治体職員として福祉部局で生活保護ケースワーカーや、環境部局で地球温暖化対策実行計画・環境マネジメントシステム策定などに従事。 現在は行政経験を活かしての記事・コラム執筆や、故郷である京都府宇治市の地球温暖化対策推進パートナーシップ会議のメンバーとして、小水力発電の普及促進や環境保全活動を行っています。

生活保護を受けることのデメリット

生活保護を受けるには様々な制約を受けるため、今までと同じ生活を送ることができなくなります。

具体的に知っておくべき生活保護のデメリットの代表的なものを挙げます。

  • 所有できる物に制限がかかる
  • 住む場所が制限される
  • お金の使い方に制限がかかる
  • ローンを組めない
  • クレジットカードを作れない
  • 家族や親戚にバレる
  • 定期的にケースワーカーとの面談が必要

    それぞれの生活保護におけるデメリットの詳細について、解説していきます。

    所有できる物に制限がかかる

    生活保護の大きなデメリットとして認識しておきたい大切なことは、所有できるものに制限がかかることです。

    例えば、以下のようなものは所有が制限されてしまいます。

    • 自動車・大型バイク
    • 生命保険・学資保険
    • 贅沢品

      自動車は、生活保護を受けるにあたっては原則として手放す対象です。

      ベンツやレクサスといった高級車や大型バイクの場合は、日常生活には必要ありませんから、売却して生活費に充てることを求められます。

      生命保険も同様です。

      終身保険や養老保険といった「貯蓄型保険」の場合、保険料払込期間を超えて解約すれば支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れます。

      老後の生活費のために始めた保険であったとしても、生活保護を受給するなら解約して当面の生活費に充てる必要があります。

      学資保険についても同様です。

      また、当然ながら贅沢品も所有することができません。

      例としては「2台以上保有しているパソコンやスマートフォン」です。1台目は仕事にも使うため認められることもありますが、2台目以降は贅沢品扱いになる可能性があります。

      貴金属や高級腕時計などの宝飾品も、もちろん贅沢品に含まれるため売却する必要があります。

      資産に制限がかかる理由

      厚生労働省が定める生活保護の要件には「世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提であり・・・」と書かれています。

      車や住宅を買うお金があるのなら、生活保護を受けずに生活費に充てることが原則です。

      また、生活保護は借金の返済に使うことが許されません。

      住宅ローンの残債がある場合、原則として生活保護を受けるなら引き続き住み続けることは出来ません。売却して現金に換える必要があります。

      必要に応じて所有が認められるケースもある

      ただし、生活保護を受けているからといって何もかも手放さなければいけないわけではありません。

      すでに住宅ローンが払い終わってる住宅や、残額が少なく、支払い繰り延べが認められていて、住宅価値もそれほど高くない場合であれば、所有は可能です。

      そのほか、自動車は高級外車のような贅沢品はもちろん所有できませんが、働くための交通手段や、へき地で通院のための手段として必要な場合は認められることもあります。

      都心であれば地下鉄等が発達しているうえ土地も広くないため、車がなくても生活に不便はありません。
      一方で地方に行くほど土地は広く、バスの本数も限定的になります。そうなれば車がないと生活できなくなります。

      このように、仕事をして自立するために車が必要であれば、認められる可能性は高くなるのです。

      住む場所が制限される

      生活保護を受けるにあたっては、住む場所が制限されることも考えられます。

      家賃が高いところに住んでいて「家賃が高いから生活できない・・・」といった理由で生活保護を受けることはできるはずがありません。

      自身の収入に見合ったアパートや公営住宅などへの転居が必要になります。

      なお、選択するアパートや公営住宅は、生活保護の住宅扶助の上限までの家賃に収まる住宅を選択するのが原則です。

      住む場所の相談に乗ってくれるケース

      原則は家賃が生活保護の費用以内に収まる場所ですが「親から暴力(DV)を受けていた」などの理由があれば、遠方への転居が認められる場合もあります。

      住宅を持っている場合「リバースモーゲージ」が必要になることも

      住宅ローンを完済した住宅を持っていても売却する必要はありませんが、既存の制度を活用することでお金を借りるように指導を受ける可能性があります。

      自宅を担保に社会福祉協議会からお金を借りる「リバースモーゲージ」です。

      借りたお金は死後に「住んでいた住宅を売約する形」で返済するため、生前は利息以外の返済負担がかからないのが原則です

      持ち家がある場合は、この制度の活用する場合や、売却する必要があることを覚えておきましょう。
      それでもお金が足りないなら生活保護を受けられます。

      お金の使い方に制限がかかる

      自分が稼いだお金であれば、使い道は稼いだ人の自由です。

      生活費にする・貯金する・旅行に行く・ブランド物を買うなど、稼いだ人の自由にすれば良いでしょう。

      一方で生活保護に関しては、最低限の生活(家賃・食費・子どもの教育費用など)に使うことが前提です。

      生活保護費で受け取ったお金をパチンコや競馬に使わないように、ケースワーカーから指導が行われます。

      とはいえ、生活保護費をやりくりした上で節度をもって楽しむ分には問題ありません。

      ただし、度を超えて周囲に迷惑をかけてしまったり、自立を阻害するような場合は指導の対象になります。

      生活保護費からの返済が認められないためローンを組めない

      生活保護者は「自立した生活を目指す」という観点から、原則として生活保護による借金返済は認められません。

      子供の進学費用を公的融資で賄うなど、福祉事務所が必要と認めない限り、生活保護費でお金借りることは原則不可能です。

      分かりやすいのは「カードローン」でしょう。
      カードローンとは、金融機関が提供している「無担保・保証人なし」のローンのことです。

      • 銀行カードローン
      • 信販系カードローン
      • 消費者金融カードローン

      発行元の金融機関によって、上記のような種類があります。
      いずれも現金を借り入れる「借金」であることは変わりません。

      万が一、ローンを組んだり、生活保護中にカードローンでお金を借りた場合、不正受給として生活保護の返還を求められる可能性もあります。

      すでにカードローンを契約してしまっている場合、あとから使いたくなる前に解約するのが賢明です。

      生活保護費からの支払いが認められないためクレジットカードを作れない

      お金を借りる身近な手段としては、もうひとつ「クレジットカード」もあります。

      クレジットカードでは、ショッピングの代金を立て替えてもらえる「ショッピング枠」、カードローンのようにATMから現金を借りられる「キャッシング枠」に分けられます。

      このうちキャッシング枠は、カードローンと同じ借金になりますので認められません。

      またリボ払いなどで収入を大きく超えた買い物をして生活を圧迫する場合などは、やめるように指導されたり、債務整理するよう指導されたりすることも考えられます。

      指導に従わず生活保護を受けながら債務が膨らむような場合は、生活保護の廃止や不正受給になる可能性もあります。

      また、そもそも収入源が生活保護しかない場合、新たなカードの取得は難しくなるでしょう。

      家族・親戚に生活保護はバレる

      生活保護を受給するにあたって「家族や親戚にバレないように借りる」ということはできません。

      生活保護申請を受けた福祉事務所は、家族・親戚に「この人を扶養できませんか?」という確認作業を行うためです。

      これによって生活保護を申請した事実が家族や親戚に伝わってしまいます。

      家族に秘密で生活保護を受けることはできないことを理解しておきましょう。

      近所にはバレることはない

      家族や親戚に生活保護を受けている事実を隠すことは出来ませんが、近隣に漏れることはありません。
      ケースワーカーは公務員ですから、個人情報を漏らすようなことはないように徹底されています。

      家族や親戚が周囲に漏らさない限り、近所にバレることはないでしょう。
      学校においても、子どものプライバシーを配慮して他言しないように求めることができます。

      定期的にケースワーカーとの面談が必要

      生活保護は最初に手続きしたら終わり、ではありません。
      生活保護を受ける以上、定期的なケースワーカーの訪問を受ける必要があります。

      生活保護受給中、年に3~4回は担当であるケースワーカーが自宅を訪問してくるのが原則です。あらかじめ訪問時間を打ち合わせすることもありますが、抜き打ちで訪問する場合もあります。

      担当者に収入状況や求職活動の状況、預貯金の金額等を報告するため、いつ何を聞かれてもいいように、自分の状態を把握しておく必要があるのです。

      それまでの受給者の素行によっては、担当者から注意・指導を受けることもあるかもしれません。

      ケースワーカーが訪れる目的は、生活保護を受けている人の現状を把握して困りごとのサポートをするためです。

      本来は定期訪問は生活保護受給者にとって、まっとうな生活に戻るための助けになるメリットになります。

      しかし、生活保護を受けている人の中には、ケースワーカーとの面談を嫌がる人も少なくありません。そのような人にとっては、定期的な面談はデメリットになってしまいます。

      生活保護にはメリットも多くある

      最低限の生活費を受け取れる

      国が定める一定の基準を満たす家庭には、国が定めた「最低生活費」が生活保護費として支給されます。

      基本となる扶助は衣食住にあたる「生活扶助」と「住宅扶助」です。

      生活扶助で日常生活に最低限必要な費用(水道光熱費・食費・被服費等)を補助してくれ、住宅扶助ではアパートの家賃や転居費用、一戸建てなら住宅の修繕費用等が補助されます。

      生活保護受給中に支払いが免除されるものがある

      生活保護の受給中、支払いが免除されるものや無料になるものが決められています。

      • 所得税・住民税・固定資産税などの税金
      • 国民年金保険料
      • 国民健康保険料
      • 介護保険料
      • 介護サービス利用料
      • NHK受信料
      • 保育料

      ただし、生活保護を受けているから必ず免除になるわけではありません。免除対象になるには生活保護受給者からの申請が必要です。

      生活保護受給中はいくつかの「義務」が発生する

      生活保護は最低限の生活費をカバーしてもらえるというメリットがある反面、果たすべき義務もある点に注意が必要です。

      • 生活に利用されていない土地・不動産があれば売却して生活費に充てること
      • 働くことができるなら、できる限り働くこと
      • 年金や公的手当を受けられる場合は、まずそちらを活用すること
      • 支出の節約を図り、そのほか生活の維持・向上に努めること
      • 福祉事務所から生活の維持・向上に関して必要な指導又は指示を受けた場合には素直に従うこと

      これらの義務を果たさない場合、生活保護を受けることはできないと理解しておきましょう。

      生活保護とは憲法25条に基づく制度

      生活保護とは、ケガや病気などの「やむ負えない事情」で就業が困難になったしまった人に向けて、生活するうえで最低限必要な費用を補助してくれる制度のことです。

      憲法25条で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するための制度として作られています。

      ただし利用には要件があり、生活が苦しければ誰でも使えるわけではありません。

      厚生労働省では、生活保護の要件として以下のように規定しています。

      生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
      引用元:厚生労働省|生活保護制度

      使えるお金があれば使い、働けるなら働いてお金を稼ぐ。それでも最低生活費に満たない収入しか得られないほど困窮してしまう場合の、最後のセーフティーネットとして生活保護を受けることができます。

      あくまで最後の手段ですから、その前にできることがあれば全てやり尽くすのが原則です。

      しかし、働ける人は全く保護を受けられないかというと、それも違います。

      一生懸命働いても1ヶ月の最低生活費に満たない場合、その差額を受け取ることも可能です。本当に困っているのなら、福祉事務所に相談する価値はあるでしょう。

      【まとめ】生活保護にはデメリットがあることを知っておこう

      今回は、生活保護を受けることのデメリットを解説しました。

      今回紹介した内容をデメリットに感じるか否かは人によっても異なりますが、私生活や行動全般に一定の制限がかかるのは間違いありません。

      特に生活保護の受給に後ろめたさを感じている人にとって「家族や親戚にバレてしまう」というのは大きなデメリットではないでしょうか。

      しかし、困窮した状態から脱却して生活を立て直すためには有効な制度です。デメリットを理解した上で、必要であればしっかりと利用していきましょう。

      本記事に記載されているのはあくまでも生活保護制度の例であり、必ず同じように保護が受けられるとは限りません。
      生活保護にはこの他にも様々な特別基準やルールがあり、実際にどのような支援が受けられるかは個別の状況に応じて福祉事務所が決定します。
      実際に保護の相談や申請を行う際は必ずお住まいの地区の福祉事務所(市役所や区役所、保健所の福祉窓口)に直接ご確認ください。